――今度の2MAN LIVE[2007]で共演することが決まっている両者ですが、元をたどると最初の接点はいつ頃のどんな出来事だったか覚えていらしゃいますか?
海:僕はもともと、DaizyStripperのメンバーが前にやっていたバンドをそれぞれ知っていましたし、その全部と当時タイバンもしていたんですよ。Clavierもやってもんね?
まゆ:してた、してた(笑)。
風弥:懐かしいね。
海:ただ、当時はあんまりちゃんとしゃべったことは無かった気がする。
まゆ:O-WESTで何かのイベントで一緒になったときに、少ししゃべったことがあったくらいかもしれない。
海:まぁでも、とにかく皆と顔見知りではあったし、DaizyStripperが出来た時は「あぁ、知ってるコたちが知ってるヤツとバンドを組んだんだ」って思ったんですよ。なんなら昔、俺は夕霧とやりたいなと思ってメンバーとして誘ったこともありましたもん(笑)。そういう経緯もあって、俺は夕霧に対して1度も敬語を使ったことがない(笑)。
――いやはや、そんな過去があったとは知りませんでしたよ。
海:実は、その時ライヴも一緒に1回やったことがあるんです。あれは、ふたつ前にやっていたバンドの時だったかな?「試しにセッションしてみようよ」っていうことで、コピーをやりました。
――かくして、その結果やいかに?
海:夕霧が良い声をしているっていうのは、俺もメンバーも皆わかっていたことだったから、やる曲は敢えて夕霧に選んでもらって、その傾向とかで趣味とか特性を知りたいと思ったんですけどね。ただ、それでやってみたら僕らと夕霧ではちょっと方向性が違う感じがしたんです。そして、そんなことがあってしばらく経った頃にDaizyStripperっていうバンドが出て来て、メンバーの顔ぶれをみたら「あ。全員知ってる!」ってなりました(笑)。
風弥:そういうことだったんだ(笑)。
Tohya:僕の場合、海ほどは濃密な思い出ってそんなに無いんですけどね。でも、当時「ダンデライオン」を聴いた時に「すげーカッコ良いバンドが出て来たな」って感じたあの記憶が、今でも強く残ってます。やっぱり、曲が良いバンドこそ本物だと思うし、自分たち自身もそうありたいと思いながらずっとやって来ているところがあるし、自分で作るようになってからは、いっそうDaizyStripperの作る曲の良さっていうものに刺激を受けたりして来ました。
まゆ:Tohyaくんと俺たちが最初にちゃんとしゃべったのは、九州じゃなかった?
Tohya:そう。×TRiP×主催のイベントツアーで廻ってた、福岡の打ち上げね。あのときちょっと酔っぱらっちゃって、やたら絡むようになったのは覚えてる(笑)。
まゆ:「風弥のドラムが…!」って、めっちゃ熱く語ってたもんね(笑)。
海:Tohyaは酔っぱらうと、普段のこの感じとは全く別人になるからなぁ。熱いというよりは、ウザい・うるさい・やかましいの三拍子が揃うって言った方が正しい(苦笑)。
Tohya:たまにしか一緒にならない人には、それでヒかれることもあります(笑)。
風弥:飲んでる時の、海くんとTohyaくんの温度差が凄いよね。
海:俺はずっと変わらないからなぁ。
風弥:ふたりのそのギャップが、見ていると凄く面白い(笑)。
――ちなみに、その九州でTohyaさんが訴えていた「風弥のドラムが…!」の詳細は、どのようなものだったのでしょう。
Tohya:結局、風弥くんはドラムのテクニックがハンパじゃないんでソコですよね。同年代のドラマーの中で抜群に上手いっていうのがあるから、多分そのあたりを熱く語っていたんだと思います。
風弥:いやいや、そんな(笑)。まぁ、同世代でお互いドラムをやっているという意味では、尊敬しているアーティストも近かったりするしね。Tohyaくんとは、話をしていて「あれ、いいよね!」って意気投合することがけっこう多いんですよ。
――そんな風弥くんからすると、vistlipというバンド、そしてTohyaくんというドラマーのことは当時どのような存在として認識していましたか。
風弥:あの頃って、周りにはギャオギャオしたバンドがわりと多かったんですよ。そういう中で、vistlipは歌をちゃんと伝えようとしているバンドだと感じたし、そこにはメッセージもあるなというのが分かったから、ある意味でDaizyStripperと近しいものを感じていたところがありましたね。それに、演奏も上手いバンドなので「これは手強いライバルだな」という風な意識をしていたところもありました。
海:ほんと、夕霧は良いメンバーを見つけて良いバンドに入ったよね。このバンドが出来た時に、まず思ったのはそこだったんですよ。多分、彼は一緒にやるメンバー次第でいろんな方向に振れるタイプだろうから、周りの人材に恵まれるっていうのが大事だったと思うんですよ。あとは、直感でひたすら突っ走っちゃうところもあるから、もし相性の良くない人たちとだったら、きっとバンドとしてまとまっていなかったんじゃないかなぁ。だってね、あれはのちにDaizyStripperの主催に呼ばれた時だったと思うんだけど。久しぶりに観た夕霧は、一緒にセッションをやった時と全然違ったんですよ。
――それはまた、大変興味深いお話ですね。
海:というか、逆にこれはまぁコワイと思って(苦笑)。DaizyStripperって、正直あんまり弱点のみつけられないバンドでしょ?肩を並べている同世代のバンドの中でも、まず根本的なところからしてしっかりしているし、隙が少ない。唯一、隙があるとしたら夕霧が暴走するってことくらいなのかなと(笑)
風弥:あははは!(爆笑)
海:たまにMCとか、「夕霧は何を言ってるんだ?!」っていきなり暴走する時があるじゃない。自分の中ではちゃんと完結していることなんだろうけど、いろいろ言葉としての説明が足りなくて、ライヴを観ている側からすると、「意味わかんねぇ」みたいな(笑)。
まゆ:よく見てるなぁー(笑)。
風弥:海くんは、ほんとに視野が広い。
まゆ:洞察力が鋭いよね。
風弥:彼(夕霧)、こういう風に言われるの凄い嬉しいと思いますよ。「そんなに俺のこと、分かってくれてるんだ!見てくれてるんだ!!」って絶対に喜ぶと思います(笑)。
――先ほど、かつてのDaizyStripperに対しては「ほぼ隙がなかった」と評された海さんですが、一方で当時のvistlipについて自己分析するなら、どのような評価が出来ますか。
海:隙だらけですよ。
Tohya:穴だらけですね(笑)。
風弥:えっ、そんなことないでしょ。
海:隙だらけなのに、それを隠そうともせず敢えて見せていくバンドでした(笑)。
風弥:俺らの方こそ、あの頃なんてレンコン並みにスッカスカだったのになぁ。
Tohya:そうか、じゃあこっちは横から見てたんだね。横からだと、穴は見えない(笑)。
風弥:それそれ!まさにそういうことだと思うよ。もう、真上から見たら太い穴が何本も通ってたから(苦笑)。
Tohya:ウチは、レンコンを立てずに横にして穴を見せながら歩いてたタイプだね。
海:関係者の人とか、スタッフの人たちからも、あの頃はその穴についてバシバシ突かれていましたね。しかも、突かれた上でふんぞり返って、「別にそれでいいんですけど!」って開き直ってました。
――それだけ、潔いところのあるバンドだったのですね。
海:僕らはそもそも、あの頃のシーンの中にはびこっていたセオリーだとか、暗黙の了解みたいなものに対しての抵抗を感じていた中で、このvistlipを始めたという経緯がありましたからね。周りを見ていてやりたくないと思うことはいっぱいあったし、同時に自分たちのやりたいことはいろいろあったから、人によっては「なんでアイツらはこれをしようとしないんだ?」って、疑問に感じるケースも多かったんだと思います。実際、ホントいろいろ言われたしね。「何がしたいの?」っていうのも、よく訊かれたなぁ。
――そうした際には、どのように回答をされていたのです?
海:俺は「カッコ良いことをしたいだけですよ。自分たちがカッコ良いと思うことを、いろんなかたちでやってるだけです」って言ってました。未だにそういうことを言っていると、ほかのメンバーには軽くバカにされるんですけど(苦笑)。
Tohya:バカにしちゃいますね(笑)。
まゆ:vistlipって、メンバーの意志が強いバンドだよね。それはずっと見てて常に感じる。自由にやってるし、こうしなきゃあぁしなきゃで凝り固まることなく、それでいて5人で固まってるっていうところが、vistlipの大きな特徴のような気がする。
風弥:個々が独立しているのに、バンドとして絶妙なバランスのもとにまとまっているところが凄いと思います。
海:まとまってるのかな?ここまで続いてきているわりには、全然バラバラだよ。言うことも、行動も、基本は皆バラバラ(笑)。
――だとすると、vistlipを繋いでいる要素とは一体何なのでしょうね。
海:ヴォーカルの持ってる牽引力かなぁ。バラバラではあっても、最終的にヴォーカルを立てようという気持ちは皆の中にあるんだと思います。でも、ヴォーカルの中では「俺が一番っていうのはイヤだ」っていうのがあるらしいんですよ。ここでもし、アイツ(智)が「俺が一番だ!」っていうヤツなら完全にワンマンバンドになってたんでしょうけど、そうじゃないからこそ面白いところでバランスがとれているのかもね。
まゆ:なるほどねぇ。
海:最近でこそ慣れてきたものの、アイツ(智)は写真を撮る時でもセンターで前に立つとか、本気で嫌がるからね。「なんで同じメンバーなのに、俺だけ前に立たなきゃいけないんだよ!」って。そういう子なの。
――ヴォーカリスト=フロントマンと呼ばれることが多いことを思うと、それはやや珍しいパターンなのかもしれません。
海:それもそうだし、ウチは5人とも我慢しがちなところがあるかもしれない。
Tohya:我慢、多いですよ(笑)。
海:ポジション的にそうなりやすいのかな。我慢しなくていいところまで、我慢しちゃうのが彼(Tohya)ですね。
――バンドの屋台骨を支える立場であるだけに、縁の下の力持ち的な役回りになることが多いのでしょうね。
Tohya:自分が出過ぎてしまうと、それこそバランスが崩れてしまいますからね。何時も皆の様子をうかがいつつ、出られそうなタイミングがある時は出て行こうともするんですけど、大抵それでもハジかれることになってしまうので(苦笑)、結局はやっぱり退くことになるんですよ。
風弥:そういえば、夕霧からvistlipの話は一時期よくされていたことがあったな。「あのバンドは、メンバー個々の役割分担が凄いハッキリしてるイメージがあるよね。だからこそ、バランス良く成り立ってるんだろうな」って。俺も、「それは良いことだね。俺もそれが理想だよ」って返したことがあります。
海:思うんだけどさー。風弥はもうちょっと、強引になっても良いんじゃないの?
風弥:えっ?強引?!
――これまた、海さんから非常に鋭いご指摘が出てきたましたねぇ。
海:最初の頃は、傍からみていると風弥って裏で実権を握っているタイプなのかと思っていたのね。でも、いろいろと知っていくうちに「あれ?そういうことでもねぇな」っていうことがだんだんわかって来てさ。けっこう、風弥は自分を抑えてしまうところもあるんだと思う。やっぱり、ドラマーってそういう人が多いのかなぁ。
Tohya:それはあるよ、絶対。
風弥:(無言のままTohyaと見つめあう)
まゆ:かなり通じ合ってるねぇ(笑)。
海:どう頑張ったって、ドラマーはステージ上で動けない立場だしねぇ。パートの特性上、少しひいた視点からバンドのことを見て考えるタイプの人が多いんだろうなぁ。我慢グセがついちゃうというか。風弥に関しても、俺からすると「そこは我慢しないで、言ったりやったりしても良いんじゃないの?」って思うところが多々あるんですよ。だって、彼の作ってる曲を聴けば彼がどれだけこのバンドのことを大事にしていて、どれだけヴォーカルのことを考えているかは、ちゃんと分かりますからね。
風弥:いやー、やっぱり凄いわ。こんなことまで言ってくれる人、この業界の中でも他にはいないですよ?
――さすがです。
海:まぁ、昔から知っているだけじゃなくて、あれは2年くらい前かな?一時期は同じ現場でサポートをやっていたこともあったから、風弥とはしょちゅう顔を合わせてよく話もしてたしね。風弥は俺と似た視点を持っているな、って感じるところがあるのと同時に、Tohyaに似てるところも持っていたりするからなぁ。よく、「海くん、大変だね」って風弥は言ってくれるけど、「いやいや。アンタの方が、ウチでいうところの二人分は大変だよ!」って思う(笑)。
――両バンドとも2007年に結成されているということは、かれこれ皆さんは10年近くバンドをここまで続けてきたことになります。時には、いろいろと難しい局面を迎えざるをえないようなこともあったと思いますが、その都度の山場はどうやって切り抜けて来られたのでしょうか。
海:あぁ…ウチも、2年に1回くらいそういう場面が出て来たりするんですよ。そうなった場合、俺はメンバーひとりひとりを説得していくようにしてますね。
まゆ:やっぱり、話をするっていうのは大事なことだよね。僕らも個人、個人で電話をしたりだとか、ミーティングもよくするし。
風弥:ウチも我慢をする人間が多いバンドだから、小さいものが知らないうちに溜まっていって、ある時それがピークを迎えてしまうっていうことはたまにあるんですよ。そういう時は、とにかく全員で納得が行くまで話をするっていうところに尽きるかなぁ。
Tohya:デイジーは、確かにメンバー間でよく話しあってるイメージが強いね。
風弥:とりあえず、ミーティングの時間は自他共に認めるほどすっごく長いっす。
まゆ:ヘタしたら、丸1日いくよね。昼過ぎに集まって、帰るのはテッペン超えているっていうことも時々あります(苦笑)。
――バンドによって、自治の在り方は様々なのですね。なんとなく、ここまでのお話をうかがっているとDaizyStripperは共和国制、またvistlipは合衆国制に近いシステムになっているように感じられます。
海:あ、それそうかもしれない。
まゆ:言われてみるとそうだねぇ。
――さて。違いもあれば、共通点もあり、同じ時代を生き抜いてきた両者が、この秋は2MAN LIVE[2007]で共演することになっています。この貴重な場で、皆さんはどんなステージングを繰り広げてくださることになるのかが、今から楽しみでなりません。
海:DaizyStripperって、俺の中ではいろんな意味で優等生なんですよ。逆に、ウチはイイ子ぶってる粗暴な不良が集まったバンドですからね(笑)。お客さんの層とかもお互いあんまりかぶっていない可能性が高いし、そうなるとこっちから手を差し伸べつつ下手に出ていった方がいいのか、それとも否応無しに上からブッつぶしにかかった方がいいのか…。どっちで行こうかな?あらためて考えると、この2バンドでのタイバンっていうもの自体が珍しいんだよね。
まゆ:そうそう。いっぱいバンドが出てるイベントではよく一緒になるけど、こういうかたちで一緒になるのは初かもしれない。
Tohya:なんとなく、今までの経験では“寄っていこう”とすると、そのまま自分たちらしさを出せないうちに消化不良で失敗するパターンが多かった気がする(苦笑)。
海:好き勝手やるのがいいかもね。2マンをやるのであれば、自分たちのお客さんには「前回以上の自分たち」を感じさせる必要があるし、「初めて観ます」とか、「別に興味があるわけじゃありません」という人たちに関しては、「やっぱりデイジーが良かったけど、vistlipも意外と良かった」ってなってくれれば、それで充分だと俺は思ってます。一番じゃなくても二番でいいです、っていう姑息な人間なんですよ(笑)。
まゆ:あははは(笑)。
――姑息というか、謙虚というか、いずれにしても理知的な戦法だと思います。ホスト側のDaizyStripperは、この闘いをどう受けて立ちますか。
まゆ:さっき、海くんがデイジーは優等生って言ってくれたじゃないですか。ある時期までは、どうにかこうにか「そうじゃねーよ!」って肩肘を張っていたこともあったんですけど、最近は皆にとってそう見えているのが自分たちなら、そこはもっと素直になっても良いのかなって思うようになって来たんですよね。だから、僕らも良い意味で好き勝手にやりたいなと思います。
海:デイジーは、不良に憧れる優等生タイプなんだよね(笑)。
風弥:そう。まずは髪でも染めてみるか、ってカタチから入るタイプ(笑)。
まゆ:まぁでも、結局はヘンに気張ったりするのが一番カッコ悪いと思うし、見え透いた強がりなんかは意味がないと思うので(笑)、俺らは俺らのままここは全力でぶつかっていきたいと思います。
風弥:何より、vistlipとここまでガッツリとタイバン出来ることになったのが僕は嬉しいです。デイジーのいろんな曲をvistlipのお客さんたちに聴いてもらう機会が出来たっていうのが、本当にありかだいですね。もちろん、それは逆のこともいえるし。
海:まさにね。せっかくの機会なんだし、この2マンを通して「DaizyStripperっていいね」「vistlipっていいね」っていう輪が拡がっていってくれるのが一番ですよ。
風弥:このシーンで約十年、お互いここまでやってきたバンド同士だからこそのステージングっていうものを見せていきたいですね。
海:とりあえず、僕的にはデイジーとの場合は全くキャラ的にかぶるヤツとかもいないんで、そこは今回やりやすいかなと思っているんですけどね(笑)。
Tohya:どうする?当日、デイジーのメンバーが全員メガネをかけてたら。
まゆ:面白いね。そこに狙いを絞ってかぶせていく、っていうことか(笑)。
海:いや。出来ればそういう面の攻防戦は避けたい(笑)。
Interview/杉江 由紀(YUKI SUGIE)
―「2007」 DaizyStripper×vistlip 公演詳細―
【日程】11/16(水)
【会場】新宿BLAZE
【出演】DaizyStripper/vistlip
【開場/開演】18:30/19:00
【料金】前売¥4,500 (税込) 当日¥5,000(税込)/オールスタンディング
※入場時ドリンク代別途必要
【一般発売日】9/3(土)
【備考】営利目的の転売禁止/未就学児童入場不可
【公演に関するお問い合わせ】DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00-19:00)