――DaizyStripperとダウトも、2007年結成の同期組になりますね。当時のなれ初めエピソードを教えてください。
幸樹:僕が覚えているのは、高田馬場エリアで最初にタイバンした時のことですね。イベントなのに、ステージのバックドロップにラミネート加工をしたバンドロゴみたいなのを貼っていたから、それが妙に印象に残ってます。ただ、その時はまだメンバーと話すところまで行っていなかったですね。そのあとに、名古屋のHOLIDAYで一緒に出た時はCDを交換して少し話をしました。あれをもらったよ。『ダンデライオン』のセカンドプレス(笑)。
なお:そこまで覚えてくれてるんだ!
夕霧:ありがとうございます(笑)。
幸樹:「あれ?もう初回じゃないんだ」って思ったことまで、ちゃんと覚えてる(笑)。
――ちなみに、ダウトからはその時どのCDを渡されたのですか?
幸樹:僕らの方から渡したのは、一番最初に自主で出した『平成バヴル』っていうCDだったと思います。
なお:あ、それもらったの覚えてる。あれって自主だったんだ?
幸樹:そう。あの頃は別にスピードディスクとかでもなく、完全なる自主制作。プレスも、なるべく安いところっていうので韓国に出したのかな?それで出来上がって来たヤツを、ショップに自分たち自身で流して販売してもらう、っていうことをやっていた時期でした。
――そのくらいの時期、後にダウトのドラマーとなる直人さんは何をしていらしたことになるのでしょうか。
直人:僕はですねぇ。10年前くらいだとまだ福岡で×TRiP×をやっていて、Be-1(ライヴハウス)に頼んでレーベルを起ち上げてもらった頃でしたね。そのあたりから、東京からバンドさんを呼んでのイベントもやるようになったんですよ。そして、そのあとに今度は僕らも上京しようということになりまして、自分たちで初主催イベントを開いたんです。それが2009年のアタマ頃だったんですけど、DaizyStripperとからむようになったのはそのライヴが切っ掛けでした。
夕霧:うん、出た。あのときはvistlipもいて、打ち上げも一緒にやったもんね?
なお:あ、それ俺も覚えてる!
夕霧:あのときは、とにかく嬉しかったんだよね。だって、福岡の×TRiP×って言ったらもう凄く人気のあるバンドっていうイメージが強かったから、そのバンドに誘ってもらえたっていうのが凄い光栄だったの。
幸樹:あぁ、なるほどね。当時はそういう感じだったんだ。俺からすると、ダウトを始めてから最初の3年くらいはDaizyStripperと良く一緒にやっていたな、っていう感じがあったんだけどね。そのあと、お互いにワンマンツアーをやるようになってからは、しょっちゅう一緒にからむというよりも、おのおのが自分たちの世界を追求していくみたいなモードになっていたような気がするんですよ。
夕霧:そういえば、ダウトが2010年に47都道府県を主催の[武者修業]で廻ったときには、西日本を中心として半分くらいは出させてもらったことがあったよね。少なくとも、四国と九州は全カ所行った。
幸樹:あー、それもあったなぁ。
夕霧:だからね、このあいだデイジーで47都道府県ツアーをやった時に、あのダウトのツアーぶりで行ったところがけっこう何カ所もあったの。それもあって、MCでダウトの名前はよく使わせてもらってたよ。「今日はダウトツアーぶりだぜ!」って。凄いホットワードになってた(笑)。
なお:楽屋でもホットワードになってたよね。「次に行くのは何処だっけ。ほら、ダウトツアーで行ったあそこ。懐かしいなぁ」みたいに(笑)。
夕霧:そうそう。「あの会場でやった時、いぶちゃん(威吹)楽屋であそこに座ってたよねー」的な思い出話もけっこう出たもん。
――その47都道府県ツアーで一緒に廻っていたときには、ゴハンを皆で食べたりするようなこともあったわけですか?
幸樹:よくありましたよ。
なお:それどころか、温泉も行ったしね。
夕霧:あぁ、風弥とでしょ?
なお:うん。俺と、風弥と、幸樹さんと、ひかちゅう(ひヵる)の4人でね。
幸樹:わざわざ大分まで、ツアーの合間にクルマで行ったんですよ。
――その際、運転はどなたが?
なお:幸樹さんでしたね。
幸樹:俺だったか。あの温泉、偶然行ったとこだったんだけど実は凄い有名なところだったんだよね。加水をしない濃い温泉で、湯温を下げるのにワラをひたして調節するっていう手法を、日本で初めて取り入れたところだったらしいです。皆で行った後に、テレビでその情報を知ったんですよ。
夕霧:幸ちゃんは、何かっていうと何時も俺らを誘ってくれてたよね。ただ、その頃はバンド的にミーティングを特に多くやっていた時期だったりもしたから、「ごめん。ミーティングが終わり次第だったら行けるんだけど…」っていうことが、何回もあった気がする。そうすると、そのたびに幸ちゃんから「またミーティングですか??」って言われるんだよね。「この間もしてたじゃないですか!」って(笑)。
幸樹:実際、打合せとかミーティングって断りの常套句として使われがちでしょ?だから、最初はそういう風なことなのかなと思ってたんだけど、デイジーの場合ほんとに毎回ミーティングをしてるんですよ(苦笑)。
なお:幸樹さんが、どこかで「アイツらオソロシイ。デイジーはミーティングばっかりしてる。スゲェ!」って言ってたって、僕も聞いたことあります(笑)。
幸樹:今思うと、ウチも昔はしょっちゅうライヴのあと、誰かのホテルの部屋に集まって、その日の記録用ビデオ観ながらの反省会とかよくやってたけどな。デイジーは今もやってる?
なお:全員で、っていうのはないかもね。個々に観る人は観てる感じ。
直人:まぁ、バンドがそういうことをやるのって、やっぱりわりと最初のうちだけなんじゃないですかねぇ。
――素朴な質問なのですが、ライヴの記録用ビデオを観る場合、皆さんは自分自身のパフォーマンスをチェックすることが多いですか?それとも、バンド全体を見渡すことの方が多いとか?
幸樹:昔は映像を観たときに、「ここのスペースの使い方をもうちょっと何とかしたいね」とか、個人に対しても「ここのパフォーマンスは、もっとこうした方が良い」みたいに、ライヴをひとつのショウとかエンターテイメントとして捉えていたところがあったんですよね。でも、最近そこの観点はかなり変わってきたと思います。
――それはどのようにですか?
幸樹:計算された動きだとか、カッチリした見せ方よりも、その時々のライヴ感そのものを重視するようになってきましたね。
なお:わかる!続けてるとだんだんそうなってくるよね、バンドって。
幸樹:もちろん、曲によっては「ここでこう動く」的な決まりもあるにはあるんですけどね。でも、それはあくまでも部分的な話でしかないんです。
夕霧:うちもまさにそう。初期はライヴをやっていくのにあたって、かなり細かい決め事があったからね。感覚的には、昔が「絵画とか芸術作品を観衆に対して見せたい」っていう感じだったとすると、今はライヴの場で「皆と情熱を伝えあいたい」っていう風に、主旨が変わって来てるんだと思う。
直人:バンドって、そうやって成長していくものなんですねぇ。
幸樹:なんか他人事みたいに言っとるけど、このヒト(直人)なんてライヴで曲中独断で勝手にフレーズを変えて来よるからね。
なお:えっ、それ凄い。
幸樹:ほんと、たまに「あれっ?俺これは今どこを歌っとるんやろう?!」ってなる時があるんですよ。アレは一体どういうことなの、アナタ(苦笑)。
直人:どういうことって、何時も同じだと飽きるなぁって(笑)。
なお:やっぱり、そういうことなんだ!
幸樹:結局、考え方ですよね。そういうのって、ライヴとして絶対に面白くなるのは確かでしょ?歌う側からしたら多少戸惑うことになったとしても(笑)、俺だってギタリストだったり、ドラマーだったら、多分ガンガン変えてっちゃうんだろうなとも思うし。
夕霧:観ている側からしても、その日だけ、その場でしか聴けない音とか、そのライヴだからこそ観られるパフォーマンスって、凄く貴重だもんねぇ。
幸樹:その点、ヴォーカルって難しくない?ちょっとしたフェイクを、途中とかエンディングで入れるっていうことくらいなら出来るけど、ギターソロまるごと入れ替えくらいの変化球となると、なかなか出来ないよね。
――だとしても、曲中に土地の名前を入れたりするパターンなどもあるではないですか。
夕霧:それは俺、よくやります。たとえば、「ダンデライオン」っていう曲だったら、〈明日も世界中晴れますように〉という歌詞の、“世界中”のところをその日の土地の名前にして歌ったり。あと、ヴォーカルの場合はMCがあるからね。あれこそ、一期一会のものですよ。
幸樹:ウチにも「中距離恋愛」っていう曲があって、あれはそもそもご当地ソングだから、その場所によって歌詞は変えます。土地の名前だけじゃなくて、待ち合わせ場所だったり、曲全体で5カ所くらいアレンジポイントがあるんですよ。
なお:うわぁー。いいな、それ!
夕霧:このヒト(幸樹)の凄いところは、それを台湾でもやるところだよね。台湾行った時、台湾語で歌ったんでしょ?
幸樹:あぁ、「あいするひと」のことね。
夕霧:台湾のファンに届けたいからって言って、歌詞を覚えて歌えるレベルまで持っていったっていうのは、凄いと思う。
幸樹:本人はとにかく覚えたままを歌っているだけだから、最初は言葉として何を歌っているのかまでは全然分かってなかったけどね(苦笑)。
直人:語感のみで勝負(笑)。
夕霧:いやでも、そこまでやるヴォーカリストはなかなかいないでしょ。俺はマジすげーじゃん!って、尊敬したよ。
幸樹:この前出したアルバムでも、全英詞の歌を初めてやったんだけどね。その時も、歌ってる時は語感しか把握出来んかったなぁ。もちろん、自分で書いた詞を訳しているわけだから内容は分かっているんだけど、フレーズごとに自分が今どんなことを歌っているのか、ということまでは、どうしても意識が出来ないんですよ。理想を言えば、もっとそこの細かいところまで分かった上で歌えるようになりたいですね。
夕霧:この姿勢が素晴らしいもんな。
幸樹:韓国に行った時は、BIG BANの曲を韓国語で歌ったよ(笑)。
なお:自分たちの曲じゃなくて?
幸樹:うん。まずは姿勢として、「僕らはこの国のことを思ってここまで来てますよ」っていうのが大事かなと。
夕霧:そうだよね。外国のアーティストが、日本公演でもし日本語で歌ってくれたら、俺も感動しちゃうと思う。
幸樹:デイジーも、台湾はけっこう行ってるんじゃない?
夕霧:その切っ掛けを作ってくれたのも、実は幸ちゃんだったんだよね。「このあいだ、台湾に初めて行ったんだけどさ。マジで向こうは凄いよ!」っていう話をまずは彼から聞いたんですよ。しかも、「ファンの皆がめちゃくちゃ熱いから、デイジーも絶対行った方が良いって!!」と背中を押してくれたから、それで事務所の人たちに交渉して実現したんです。行ったら、ほんとに死ぬほど盛り上がってビックリした(笑)。
なお:確かに、あれは相当キテたね。
直人:台湾でやった時は、俺もめっちゃ感動しました。ヤバい、めっちゃ人気あるやん!ってなったし(笑)。でも、個人的にはゴハンとかの面だと日本の方が好きかなぁ。
なお:俺もそう!
――あら。台湾は、何処で食べても美味しいところばかりなイメージしか無いですよ?
幸樹:俺もね、ずっと諭してるんです。「これ美味いよ?」って。でも、全然ダメなんです。慣れてくれない(苦笑)。
直人:ラーメンは好きなんで、排骨麺?あれを一度食べてはみたんですけど、あの香辛料がどうもちょっと…。
なお:八角かー。台湾臭だよね、あれって。
幸樹:海外に行くと、食べものもそうだけど、文化の違いにも気付かされるよね。
――たとえば?
幸樹:台湾ってマッサージ屋さんがけっこうあちこちにあるんですけど、看板にやたらと“局部”って書いてあるんですよ。おいおい、こんなに堂々とそんなことを書いちゃってて大丈夫なんか?と思っていたら、台湾でいう局部というのは“弱っているところ”という意味だったらしいです(笑)。
夕霧:勘違いだ。あははは(笑)。
幸樹:そりゃそうでしょ。日本人からしたら、局部は局部じゃないですか!…って、そもそも何の話でしたっけ、これ(笑)。
――では、そろそろ話を本筋に戻しましょうか。つまり、ここで本題としたいのはDaizyStripperとダウトは共に様々な経験をしながら、シーンの最前線で闘い続けてきたバンド同士であり、10年選手になろうかという高い経験値があるからこそ、それぞれにバンドとしての逞しさや強みを持っているのではありませんか、ということなのです。
幸樹:その日の状況だとか、お客さんたちのリアクションどうこうに関わらず、常に音楽的な楽しさをライヴの中に見出せるようになって来た、というところは今の自分たちにとっての強みかもしれません。おそらく、直人が加入した影響もそこにはありますね。
なお:それは特にどういう面で?
幸樹:安心して全てを任せられる、というところかな。さっき、「曲中にいきなりフレーズを変える」とは言ったけど(笑)、そういうところも含めて直人のことは信頼しているし、気兼ねなく自分は自分の持ち場のことにだけ集中していられるんですよ。
直人:そんな風に言っていただけるとは、ありがたいです。最近、ドラマー仲間ともよく話をするんですよ。「このところの若いドラマーって、皆かなり上手いよね」って。ただ、テクニックうんぬん以上の説得力をどれだけ音に込められるか、という点に関してはそれなりに経験を積んで、いろいろと培ってきたものがある俺ら世代の方が、絶対に若い子たちよりも勝っていると思いますから(笑)。そこはこれからも、より磨いていきたいなと考えている部分です。さすがに、これだけ長くバンドをやって来ていると、地に足が着いて来るんでしょうね。
夕霧:デイジーもさ。一回まゆが休んで4人になったりとか、その時期に苦しいツアーを頑張って乗り越えて、また5人に戻って、といろんなことがあったからね。そうやってここまで9年やって来て思うのは、この5人だったらこの先またいろんなことがあっても、きっと大丈夫だろうなっていうことかな。
――感慨深くきけるお言葉ですね。
夕霧:当然、そこまでの域に行くには1年目とか2年目じゃさすがに難しかったし、この5人で何度でも目の前の壁はぶち壊してきたからこそ、これからもそう在り続けられるはずだ、っていう自信があるんです。
幸樹:カッコえぇなぁ(笑)。
夕霧:いやほんと、今のデイジーが一番カッコ良いって思えるようになったんだよ。それは何も、過去を否定するわけじゃなくてさ。
――要は、バンドとして日々アップデートし続けているという意味ですよね?
夕霧:そういうことです。iPhoneとバンドは、最新・最先端が最高ということでこれは間違いない!
なお:これだけいろんな経験をしてくると、もうコワイモノとかも無いですね(笑)。
幸樹:そうやろうなぁ。そうじゃなきゃ、人のバンドのお立ち台とか壊さないもんね?
一同:(笑)
――えっ。まさか……?
幸樹:今もしっかり、ウチのお立ち台にはキズが残ってるんですよ(笑)。
なお:ホントごめん(苦笑)!
幸樹:まぁ、たいしたキズじゃないから半ばこれはネタですけどね。
直人:あれは去年だったっけ?
夕霧:去年の[ZEAL LINK TOUR]の時。
幸樹:楽屋にいたら、スタッフの人が来て「DaizyStripperのギターの人が、お立ち台を壊しました」って言われたんですよ。どう思います?あんな鉄のカタマリが壊れるって、そんなねぇ(笑)。
――なおくんは、そんな怪力の持ち主だったのですか??
幸樹:なんかね、マイクスタンドを打ち付けちゃったらしいんですよ。
なお:はい。ライヴになると、どうしても心の制御が出来なくなってしまって。魂の解放をした結果、そのようなことになってしまいました。…人サマの物を、ごめんなさい。
幸樹:たいしたことなかったからな、別にもうえぇよ。穴は開いたけど見えないとこやったし、一応テープでふさいだし(笑)。
夕霧:なんか、すいません(苦笑)。
なお:ってことで、僕はもうコワイモノは何もないです(笑)。
幸樹:あははは(爆笑)。
――お願いしますよ。くれぐれも、今度の2MAN LIVE[2007]ではそのようなことが起こらない程度の絶妙な加減で、うまく魂の解放をしてくださいませ。
直人:だけどさ、ライヴって観てる側としても完全に行き切っちゃってるアーティストの姿に震えることってあるよね?それが正しいことかは別としても、俺は「なんなら、自分が倒れるところまで行っちゃってもイイんじゃね?」くらいに、思っているところが意外とありますよ。
夕霧:あー。そこは俺も分かる。俺たちがやってるヴィジュアル系って、限界まで自分を追い込んだその先にあるものを表現しているところが、きっとあるもんね。そういう自分たちの姿を皆に観てもらうことで、皆の方も一緒に共感して魂の解放が出来るようになる、みたいな。
直人:とりあえず、今度のライヴでも俺は行けるところまで行っちゃいたいです。やってるやるぞ、というスタンスだけは誰にも負ける気がしない。
幸樹:~♪(口笛)
なお:うわー。そういうの、凄い久しぶりに聴いたなぁ。
直人:古い!昭和のリアクション(笑)。
夕霧:このタイミングの口笛って、少年マンガとかでしかみたことないし(笑)。
幸樹:文字でこのニュアンス、どれだけ伝わるかなぁ(笑)。
Interview/杉江 由紀(YUKI SUGIE)
―「2007」 DaizyStripper×ダウト 公演詳細―
【日程】10/3(月)
【会場】TSUTAYA O-EAST
【出演】DaizyStripper/ダウト
【開場/開演】18:30/19:00
【料金】前売¥4,500 (税込) 当日¥5,000(税込)/オールスタンディング
※入場時ドリンク代別途必要
【一般発売日】9/3(土)
【備考】営利目的の転売禁止/未就学児童入場不可
【公演に関するお問い合わせ】DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00-19:00)